子どもはいつも未来への視線を持っていて、驚きやハテナが大好き 〜 ロバの音楽座 松本雅隆さんインタビュー

26日の土曜、日暮れの時間、夜の森のスペシャルLIVEで音楽を奏でてくれるロバの音楽座の皆さん。
ロバの音楽座は、古い楽器や空想楽器(創作楽器)を使って、楽しくて優しくて遊びがいっぱいの音楽を何十年もやってきた方たちです。NU VILLAGEで演奏してくれることになったと聞いた時、子どものための音楽や場を長年(楽しみながら!)創ってきた先輩たちをお迎えできることになって、ほんとうに嬉しかったのでした。
8月の涼しい夕暮れの日、武蔵野にあるロバの音楽座さんの拠点、ロバハウスを訪れ、たくさんの楽器や創作物に溢れるほんとうに夢のような空間でお話を伺いました。


根っこをつくる、子どもの時代

 

—ロバの音楽座さんは、古楽器や空想楽器をつかって子どもたちのために演奏活動をされています。いまのようなスタイルで音楽をするようになった経緯や想いのようなものがあれば教えてください。

 

松本雅隆さん(以下敬称略):花や木々と同じように人も根っこが大事ですね。子どもの時代というのは、その根っこを作る大切な時期だと思います。ただ知識を詰め込んだり技術を叩き込むことより、知識、技術の栄養材になる感性を豊かにすること、根っこづくりが大切だと思っています。自然を知り、創造的な遊びをする。そんなことを考えて子どもの音楽を始めました。もちろん古楽器の温もりや空想楽器の遊びも伝えたかったですね。

—創作楽器や昔の楽器を使って演奏活動をされているのはどうしてですか? また、民謡のような昔の音楽を演奏しているのにはどんな理由がありますか?

 

松本:ロバの音楽は昔の音楽ばかりではなくて、新しく創作した音楽が大半です。しかし使っている楽器がヨーロッパの中世・ルネサンス時代の復元楽器が多いので、それらの楽器の持ち味を生かして音楽を作ると、今の流行の音楽とはちょっと趣の違うファンタジックな音楽が生まれるんでしょうね。創作楽器(私たちは空想楽器と呼んでいる)を使うのは、昔のものばかりが良いのではなくて、子どもはいつも未来への視線を持っていて驚きやハテナが大好きです。それを刺激したいんです。ロバにとって古いと新しいの化学反応は大変重要な要素です。彼らは古楽器と空想楽器を体感することで、何か未来に希望のようなものを感じるんじゃないか? と思っています。

子どもたちには通じるんです。

—ロバの音楽座さんでは、楽器は「森で生まれた」、演奏する曲は「森が」「カブトムシが」教えてくれた、と表現されています。常識的には楽器も音楽も「人が」つくったと考えるものですが、音楽を人ではないものから「もらった、いただいた」と表現しているのはどうしてですか?

 

松本:森で生まれた 森で教わった音楽 カブトムシが教えてくれた曲・・・などというと、何か謎めいていますね。でも子どもたちには通じるんです。カブトムシが教えてくれた曲というニュアンスは、ファンタジーでもあるし真実でもあるし、もっと彼らの奥底に眠っている原初的な感覚を揺さぶりたいんです。大人にもね。

—”子ども”と”音楽”にはどういう関係があるのか? NU VILLAGEでもそのテーマを持っているのですが、ロバハウスを訪れて、たくさんの楽しい創作楽器や子どもたちがつくった楽器を拝見、拝聴して、”遊び”というのが子どもと音楽をつなぐ鍵なのかもしれないと思いました。遊ぶこと、音楽、子ども、についてどうお考えですか?
松本:僕たち大人自身も遊びながらいろんな事を学んだ訳だし、だから大人は子どもから遊びを奪ってはいけないですね。音楽はまずは音の落書きから! NU VILLAGEでも空想楽器づくりのワークショップをします。子どもも大人も一緒に音を遊びましょう。

 

—学術的な裏付けなどはなく私見でかまいません、音楽はどんなところからはじまったと考えてらっしゃいますか?

 

松本:音楽は今の気持ちから・・・

—今回、雅隆さん(ロバの音楽座)と野々歩さん(チリンとドロン)という親子で来て頂くことになりました。親子での競演ということになりますが、子どもとの関わり(あえて子育てという言葉は使わずに)で、がりゅうさんが考えてきたことや心にとめていることなどがあれば教えていただけますか。

 

松本:好きなことを一緒に共有する。今回のステージも彼女と好きなことを共有できたらいいなと思います。


みんなのお父さん(松本野々歩さんインタビュー)

金曜の夜に演奏してくれる、チリンとドロンの松本野々歩さんは松本雅隆さんの娘さんです。松本家も家族でNU VILLAGEに来てくださいます。野々歩さんに子どもの頃のお話も伺ってみました。

 

松本野々歩さん:たまに帰ってくる、楽しく遊んでくれるお父さんでしたね。たまに家に返ってくると、「じゃあ楽器の練習をしよう」みたいなのはいっさいなくて。横にあった桶を叩きながら、「こんなリズムもたのしいね」とか、いっしょに歩きながらそのリズムで即興で曲をつくりながら遊んだり。
技術的なことというよりは、遊び方をみたいなものをいっしょに、教えてもらっていたような気がします。教えてもらっているとはわたしはまったく思っていなくて遊んでいただけですけど(笑)。父も、自分が創りたかった、自分が遊びたかっただけだと思うんですけど(笑)。きっと父にとっては遊びも仕事もいっしょだったんでしょうね。
「子どもたち」のことで頭がいっぱいで。みんなのお父さんで、わたしもそのうちの一人という感じでした(笑))。


金曜夜、土曜夜とも、みんなで遊びながら、音楽のはじまりと夏の終わりと偶然の出会いを祝いましょう!