「”音”の”楽しみ”かたを教えてあげたい」 〜DJ Shhhhhインタビュー

今回のNU VILLAGEでも会場での選曲、そしてアクトのブッキングにも関わっているDJ Shhhhh。いま関心のある音楽のこと、子どものこと、そしてNUVのことなどをざっくばらんに聞いてみました!(聞き手:淵上周平)


ーーShhhhhくんはNUVILLAGEには最初から関わっていますが、もともとこういう野外のやクラブでのイベントなど、いろいろなパーティで遊んできたりDJとしてプレイしていますよね。

そもそもなんですが、こうしたいわゆる”パーティ”のどういうところに心惹かれるというか、なにが面白いんでしょうかね?

Shhhhh:これは単純です。ただ、音楽が好きという人の輪っかが拡がり、そこから現象が起こるということ。NUVの立ち上げメンバーだって、歳も背景も違うけど、音楽を通じて繋がって出会って、この場をクリエイションしています。これって当事者には当たり前過ぎて流しがちですが、凄いことだと思います。SNS/インターネットで心の殺し合いをし、多くの大人が疲弊している時代だからこそ、この重要さをよく思いますね。

—-なるほど。ぜんぜん知らない人、ふだんは会わない人と同じ場所で同じ音楽や空間を共有して、いっしょに楽しんだり、仲良くなったりする。たしかにそういう場は、なかなかレアな場かもしれませんね。オープンに人と出会って楽しめる場所。その中心には音楽がある、というところに、音楽の特別なチカラというか、不思議なチカラがある、というのはわかる気がします。

そういう意味では、おそらくほとんどすべてのジャンルの音楽に関心があって、それも日々変化していると思うのですが(笑)、いま、2017年6月の半ば時点でShhhhhくんが面白いと思っているのはどのへんの音楽でしょうか?

 

Shhhhh:バリ島のガムランですね。その中でもジュゴクという竹のガムラン。去年、初めてバリを訪れて、予想以上に精霊的な世界だったのでびっくりしました。植物や建物の造形など、すべて完成されていると思いました。そして、あんなに面積が狭いのに多数のガムランの種類がある。ガムランの音色の魅力は言葉で説明できないので、まだ探求は続きそうです。

ーーバリ島で生でジュゴクを聞いたら素晴らしいでしょうねえ。羨ましいなあ! 

DJでは南米のダンスミュージックなんかもかけてらっしゃいますし、ブラジルのSpaniolを日本に呼んでパーティをしたりしてますが、あっちの音楽シーンはどんなふうに見えてますか? ああいう音楽を好んでいる人が世界中にちらほらいるような気もするんですが。

 

Shhhhh:今回、招聘したSpaniolはブラジル人ですが、 その先輩にあたるDJにThomashというドイツ人が始めたvoodoohopというコレクティブが、ブラジルや世界中の伝統音楽をabelton LIVE(PC一台で楽曲が簡単に作れるソフト)でエディットして自分たちのパーティでかけています。僕なんかよりも若い世代で、土着の音楽にかえってダンスミュージックを作るのは面白いですよね。とはいえ、まだ「シーン」というよりパーティ単体での現象なようですが。ただ、チリにもそういう動きがあるようだし、ヨーロッパにも飛び火しているようで、これ系のパーティの告知はFBで毎週みますね。トルコにもあるようです。日本で近い現象は、橋の下音楽祭なんかがそうなのかなと思ったりしてます。

 

—-Shhhhhくんをはじめ、世界中の音楽フリークたちが古い儀式の音楽やお祭りの音楽、民謡など、土着的な音楽リソースにアクセスしているのが面白いなと。

 

Shhhhh:これ、ホント不思議で、音楽業界の流行だったら廃れるんですが、不思議と10年やってても求められる。グローバリズムが進んで、なんでもオンラインで無料になって聴けても多すぎてわからないんでしょうね。街から、ローカルのお店がどんどんなくなって、チェーン店ばっかりになっている。便利の代わりにフォルクロアを失っている。それへの底知れない不安があるのかなと、人類の記憶をなくさないようにフォルクローレを求めているのかなと。今、みんな本当に危機を感じてるのかなと。土着への希求はどんどん強まってる感じはします。音楽だけじゃなくて、ごはんもそうですが。

 

—-根っこはどこにあるんだろう、というのを無意識にもとめている感覚は、多くの人にあるんでしょうね。僕たちがNUVILLAGEをやっている理由もそのことに関係している気がします。土着的なもの、自分たちの根っこを意識したり大事にしながら、かつそれを新しく創っていくにはどうしたらいいか、というパラドックスを感じつつ、楽しんでいる感じです。Shhhhhくんの屋号の、”EL Folclore Paradox”というのは、今までスルーしてたんですがもしかしてそういう意味ですか?(笑)

 

Shhhhh:まさにそうです。僕や周平さんは子供頃にギリギリでバブルの大人たちをみてる世代だと思うのですが、あの頃の経済成長イケイケがかっこいいという風潮から、いつのまに草臥れた日本になってて、それは日本だけじゃなく世界もそうですよね。

その中で、なにが新しいとか考えるのも疲れてしまっている人もおおいと思うし、新しければいいというものでもない。ふと、先人の知恵や音楽の方がかっこいいということがある。伝統音楽だと思ったら先端のアイデアが詰まってた、新しいものだったら過去の焼き直しだった。ある種のParadox。

NUVではDJで、たくさん伝統音楽をかけて子供達の耳に触れさせたいし、秋にまたその種の伝統∞ダンスミュージックを体現するアーティストを南米から招聘します。自分のことを鍵や配電みたいな役割だと思ってます。

 

ーーNUVILLAGEというパーティは、子ども、という存在を大事にしているところがおそらくこれまでのパーティと違うところだと思うのですが、子どもと音楽、というテーマで想うことはなんですか?

 

Shhhhh:子供だからピュアに音楽が好き!とかそういうもんでもないと思うし、僕自身も音楽の授業は嫌いでした。小学校の授業も西洋音楽の思想がメインだろうし。ただ、琴線に触れるっていう、誰でも好きになるメロディやリズムがある。自閉症の息子も、「泳げたいやきくん」は歌いだしたりする。なにかしらの黄金比があるのかなと思ってます。

もっと違う視点の音楽を、文字通り”音”の”楽しみ”かたを教えてあげたいとは思います。今までのNVでそれが出来てたかどうかはわからないですが、少なくともそれを考えながら制作はしてます。いまのフェスのラインナップは、レコード会社がお金を出した順に決まったり、海外で人気あるから呼ぶ。みたいな流れなので、そこに対するカウンターとしても大事かなと。古びないテーマだと思うし。

ヨーロッパや南米のトラッド音楽には、子守唄も多くて割と普通に歌われてたりする。モダンな素晴らしいアレンジの曲もある。NVではそういった楽曲もDJでかかるような場にはしたいと思ってます。ただ、それを聴いて子どもが実際に喜ぶってのはまた別の話し。子どもがダイレクトに喜ぶって、もっと「音」そのものにフォーカスして研究すべきものなんのかなと。分かり過ぎちゃうと面白くないですが。

 

—-なるほど。ここはまだ探求の余地はありそうですよね。子守唄って人が最初に聞く音楽ですし、しかも母と子の間の数十センチの空間で展開されるっていう超ミニマムな音楽で、個人的にもずっと関心があります。そういうところから子どもにいい耳を持ってもらったり、Shhhhhくんが言うようにいろいろな音を楽しめる耳を育てていったり、そういうこともしていきたいなとNUVでは思ってます。当日の音も楽しみ! ありがとうございました!